JOHN STUART MILL
On Liberty and The Subjection of Women / Edited by ALAN RYAN (PENGUIN CLASSICS)
読んだ箇所:On Liberty Chapter P122-129
ついに読み終わったー!
最後は官僚制度、地方と中央について。
最後の最後にこんなことが書かれていたとは。一回日本語版読んだけどまったく記憶になかったし、書籍やネットの「自由論」の要旨紹介ではここまで触れられていることが少ないので、改めて原点を読んで良かった。
P123 In many cases, though individuals may not do the particular thing so well, on the average, as the officers of government, it is nevertheless desirable that it should be done by them, rather than by the government, as a means to their own mental education- a mode of strengthening their active faculties, exercising their judgment, and giving them a familiar knowledge of the subjects with which they are thus left to deal.
この後に続く文でも“training of a citizen”、“the political education of a free people”などの言葉を使いつつ、地方自治に関することや地域の営利・慈善事業などを住民自らの手で行うことが大事だと述べている。
P123 …taking them out of the narrow circle of personal and family selfishness, and accustoming them to the comprehension of joint interests, the management of joint concerns- habituating them to act from public or semi-public motives, and guide their conduct by aims which unite instead of isolating them from one another.
地域のことはそこに住む住民が自主的に行う。事業に必要なお金も自分たちで出す。それによって自治体の多様性や発展が担保される。国がやると全体に画一的になってしまう。中央政府に求められる機能は、全体的な水準(法令)を守らせることと、各地域での実践の情報を収集し、参考情報として他の地域へ提供すること。実際にやるのは各地方に任せる。
中央省庁に優秀な人材と権限を集める官僚制化が進むことは望ましくないと言っている。なぜなら、官僚制度が国中から能力(実行力、優秀な頭脳)を吸い取っていくと、それ以外の市民は自分たちで地域の自治や社会事業を起こすことをしなくなり、なんでもお上にやってもらおうと期待するようになるから。さらに、官僚の方はそれを利用して自ら権力者としてふるまうようになるので、行政実施能力のなくなった主権者は例え革命を起こしたとしてももはや統治の体制を変えられなくなってしまうという。
だから、そうならないように市民の中に行政実施能力を持ち続けなければならない。それが自由であるための条件だと言える。
P126 What the French are in military affairs, the Americans are in every kind of civil business; let them be left without a government, every body of Americans is able to improvise one, and to carry on that or any other public business with a sufficient amount of intelligence, order, and decision. This is what every free people ought to be: and a people capable of this is certain to be free.
そして、中央政府の仕事を外部の者が監視してその水準を高いレベルに保つためには、監視を行う側も高い能力と知識を持っていなければならないので、その意味でも官僚だけが優秀なら国は大丈夫、ということにならない。
権力は実行力を失わない範囲でできる限り分散させ、情報は可能な限り中央に収集して全体に広める。
P128 the greatest dissemination of power consistent with efficiency; but the greatest possible centralization of information, and diffusion of it from the centre.
P128 its special duty should be that of making the knowledge acquired in one place available for others.
原則は地域の自主性、多様性を生かすことで、中央はそのサポート役くらいの位置づけで考えるのが良いとう主張が繰り返されている。
中央政府による管理体制を完成させることよりも、市民を育てることが大切で、長い目で見て国の発展にも寄与することが述べられて、この“On Liberty”は終了する。
P129 The worth of a State, in the long run, is the worth of the individuals composing it; …
感想
最後の最後に、ずっしり重い話がきた。市民の自由を守るための能力・努力の話。アナキストほどではないけど、官僚支配を警戒するミル。
“On Liberty”全体として、①まずは個人の感性・知性・能力を涵養すべし(内心の自由、意見表明の自由、行動の自由)→②地域の自治・社会事業に参加して、自分たちの公の自由を守るべし、①にも②にも、教育が重要で、しかもその教育内容においても個性・多様性・自由が尊重されるべきという、徹底的に自由主義の内容だった。
自分は会社員だったし、専門的な職務を担当していた平社員でマネジメント経験なし、その上ボランティア経験もほぼなしなので、今回の話は理想が高すぎて…。ただ、自由を守るには自分たちのことを自分たちで済ませる能力が必要だというのはもっともだ。
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